『夜市』恒川光太郎

私たちは「現実とは何か」と問われたとしたら、なんて答えるのでしょうか。

私はいま生きている「この世界」が現実だとしか言えません。

表題の恒川光太郎著『夜市』は、この世界にはもう一つの世界があるんだよということを教えてくれるような小説でした。

普段だったら、少し難しい文章が入ってくるだけで上手く想像ができずに小説を読むことを途中で投げ出してしまったりする私もこの作品だけは違いました。

テーマがホラーなだけあって、冒頭からすっとイメージが膨らみ、とても読みやすかったです。

その無駄のない文章のおかげもあってか、最後まですらすらと読めちゃいました。

ホラーを題材にはしていますが、恐怖感を煽るというよりは「もう一つの裏の世界」をひんやりと感じさせてくれるような意味でのホラーでした。

この本を読んだ後は「もしかしたらこの道を進んでいくと夜市の世界に入っていってしまうかもしれない」というワクワク感をリアルにも与えてくれます。

そういう意味では、現実が拡張された喜びがこの本を読んだ後には感じられます。

普段の日常生活の隙間にも、もしかしたら、夢が現実化されたような世界への入り口が隠されいるのかもしれません。

そう思わずにはいられない、夏の夜にはぴったりの一冊でした。

この本の文庫版には『風の古道』という話も入っており、個人的にはこちらもすごく面白かったです。

ホラーは苦手だという人にも手放しでおすすめできる『夜市』。ぜひお手にとっていただきたい一冊です。