伊坂幸太郎の「陽気なギャング」シリーズの第三弾です。
あとがきによると、シリーズの三作目だとわかった方が親切だという理由から、タイトルに「三」
を入れたとのこと。前作から九年ぶりの作品です。
陽気なギャングシリーズは、ウソを見破る名人の成瀬、絶対的な体内時計を持つ雪子、
天才スリ師の久遠、演説の達人の響野の4人がチームとなって銀行強盗を行い、その上で様々な
トラブルに巻き込まれていき、各々が知恵と能力を振り絞って何とか解決する話です。
現実なら、銀行強盗がこんな簡単に上手く行く筈はないのですがそこは物語、
いつもなめらかに成功します。ですが、いつもその後にトラブルが発生します。
第三弾となる今回も銀行強盗は成功するのですが…1.。
他人のプライバシーを面白おかしく掲載し、複数の人を破滅に追いやった実績を持つ記者・火尻に
運悪く出会ってしまったことからトラブルに巻き込まれます。
大衆の興味をそそるように大袈裟に煽り、嘘の記事を書くことも全く厭わない火尻に、四人が銀行強盗ではないかと
疑われた(決めつけられた)から、大変です。
大切な「普通の日常」を奪われるのは面倒だということで、四人は仕方なしに立ち上がります。それも飄々と。
ストーリーは、「そんなにうまくいくものか!」と思うことの連続ですが、これは娯楽小説。
伊坂幸太郎の中でも最もポップで、最も単純明快な本作品。
軽快な文体を楽しむにはもってこいです。その傾向は、シリーズが進むごとに大きくなっている気がします。